気がつけば富山公演を観てからちょうど1か月が経ちます。

実は、大千穐楽前にこの記事をアップしようと思ったのですが、もしかして邪魔になってはいけないと見送ったところこんなに時間が過ぎてしまいました。

時間をかけても私のことですから碌な記事は書けませんが、ミュージカル『レ・ミゼラブル』(Musical Les Misérables)9月6日富山公演のことを書き留めておきます。

(メモ等は取っていないため思い違いなどありましたらすいません。)

会場の富山オーバード・ホールは富山駅のほど近く、富山駅北口正面から徒歩2分のところにあります。
北口からすでに見えているので道に迷うことはないと思います。

富山オーバード・ホール
赤い風船?がトレードマークの富山オーバード・ホールです。

富山オーバード・ホール
建物横のエスカレーターを登っていくと会場のオーバード・ホールに着きます。
オーバード・ホールは音響にこだわって作られただけあり、出演者の声が真っ直ぐに素直に届く良いホールでした。
ミュージカル『レ・ミゼラブル』9月6日富山公演キャスティングボード

キャスト
ジャン・バルジャン:ヤン・ジュンモ
ジャベール:川口竜也
ファンテーヌ:知念里奈
エポニーヌ:平野綾
マリウス:海宝直人
コゼット:若井久美子
テルナディエ:萬谷法英
マダムテルナディエ:森公美子
アンジョルラス:上山竜治

富山オーバード・ホール

この日、私は1時間ほど前に会場に着きました。
それは、ジュンモさまが大阪公演中に腰を痛めたらしいと聞いて居ても立ってもいられなかったからです。
会場についてこの紙以外何も貼られていないことを確認し「ほっ」と胸をなで下ろしました。

新演出版初の北陸公演

ドキドキしながら公演のスタートを待っていた私。
公演がスタートしてすぐいつもと違うと気がつきました

いつも、一人でも大丈夫なんじゃないかと思うほどオールを力いっぱい漕いでいたジュンモバルジャンが、この日はまったく力が入らない様子で横のグランが「主よ主よ~」と歌っている時はまったくオールが動いてしませんでした…。
それをまさはるさんが必死にカバーしてました。

博多座でグランを観た時、なぜかわけがわからないけどカッコいい人と認識してしまった菊地まさはるさん、博多座みたいに目の前で観ていたら完落ちしてしまったかもしれません~。

舞台は始まったばかりなのに、これは大丈夫なのだろうかと始終ヒヤヒヤしてしまう…。
どうもある姿勢がダメっぽい気がする…。

そして、一幕最初の山場独白を歌う時が来ました



逃げたー!!」のところで逃げ方が短い気がしたのですが、司教様とのやりとりはこれまで以上に感動ものでした。

でも、司教様が立ち去った後、座り込んだまま1ミリも動かない……。

ぜ、ぜん、前奏が終わってしまう………。

前奏が終わった後の間が長い気がする……。
どうする、どうする、舞台の上には誰もいないよ~~~。

その時、ジュンモバルジャンが、手に持っていた銀の盆と銀の食器が入ったカバンを思いっ切り床に叩きつけ独白歌い始めたのです~~~

そして、途中ですっくと立った~~~~~!!!!!

いや、普通のことなんですよ、普通のことなんですけど、もしかしたら立てないのではとヒヤヒヤしていたので、素で『すごーい!!』と思ってしまったんです。

その声は、歌うというより絶叫に近かったかもしれません。
魂の叫び、まさにそんな感じ。

その時、私は『ヤンジュンモという人はなんて演じることが好きな人なのだろう、なんて舞台が好きな人なのだろう』と、まるで雷にでも撃たれたかのような衝撃が走り、あまりの衝撃に身じろぎひとつできないまま舞台を見ながら溢れる涙をハンカチで抑えていました。

ジュンモさまが舞台をこよなく愛していることは知っていましたよ。
舞台を愛しているから、後進の育成にとても力を注いでいて、どんな苦しい時も笑顔でファンサービスしてくれます。
そんな姿を見ていても、これほど深く舞台を愛されていたとは今まで感じられずにいました。
今は確信しています。
ジュンモさまは、生きているうちに舞台を去ることはきっとないに違いありません

ある方のブレイクスルーという言葉が頭をよぎりました。
役者さんが自分の壁をぶち破り、さらなる高みに昇ったと感じられるターニングポイントを表した言葉です。

私はジュンモさまのブレイクスルーに立ち会ったのではないかと感じて戦慄を覚えました。
演じ切ろうと必死にもがき、その役を全うしようと苦しみ、そのなかからまるで宝物のようなシーンが紡ぎ出された時に立ち会うことができた。

すごいもん観てしまったーーー!!!
ヾ(≧□≦*)ノ


感ハンパなし。

あんなシーンに立ち会ったなら、もう何が何でも生きている間は、いえ死んでもついていくしかありませ~ん。

娼婦に身を落としたファンテーヌとの出会いの場。
お姫さま抱っこができず警官に目配せ。
すかさず抱き上げてファンテーヌを運んで行く上山アンジョの警官。

荷馬車はまったく持ち上げられず。

そして、一幕最大の山場である対決
対決はチェーンを使ったかなりの格闘シーンです

このシーンでは、川口ジャベール演技力に脱帽しました。
半年以上同じ舞台に立ち、演じてきたのですから二人のタイミングはもうピッタリ~

特筆すべきなのは、コンディションがかなり悪そうなのに、すべてのシーンはもちろんこの対決でもジュンモバルジャンの声に一切の揺らぎがなかったことです。

最後の「誓ってやり遂げよう~

のところ、二人の声がピッタリと重なって鳥肌ものでした~

リトルコゼットくるくるはなし。
だけど、リトルコゼットに青いコートを着せた後、、、

ぎゅ~~~~~

っと、まるで生き別れになっていた我が子を抱きしめるかのように抱きしめたんです。
リトルコゼット、その暖かさにきっと安心したろうなと思うと、もうジーンと来てしまいました。

なお、ファンテへの「暖めよう~」「安心して~」の声がめっちゃ暖かくてやさしくて、こちらまでとろけてしまいそうになったことを付け加えておきます~。

幕間、右下の4人家族のお父さんが「すごなあ」と一言、家族のみなさんがうなずき合っていました。
左上の奥さま方、「良かったわねえ」と二人で感想を語られていました。
それを聞いて、すご~くハッピーな気持ちになってしまいました。

ミュージカル『レ・ミゼラブル』富山公演

二幕には、バリケード下水道があります…。

バリケードではヒヤっとするところもありましたが、みなさんが一致団結して乗り越えた感じ。

上からアンジョなんて言われている上山アンジョですが、ジュンモバルジャンがバリケードを上がる時は手を添えて何気なくサポート。
学生に突き飛ばされるシーンも何気にソフトだったような…。

上山アンジョ海宝マリウスも進歩していましたよ~
大阪公演の時と比べてもさらに声と演技に磨きがかかっていました。

上山アンジョは爽やかでいてキリっとした学生のリーダーらしいリーダー、カッコいいです。

富山公演ではかなりの後方から観たのですが、フォーメーションの美しさや First Attack の後ゆっくり水を飲むジュンモバルジャンをじっくり見ることができて良かったです。
強奪の手前でビシッと決めた時、マリウスとモンパルナスが同じ線上に並ぶのがツボでした。

レミゼはどんな席から観ても新たな発見がありますね。

そして、「Bring Him Home(彼を帰して)」。


いつもよりもずっとずっと溜めに溜め歌い始められた「彼を帰して」。
この時ばかりは咳一つせず、観客がみな固唾を飲んで第一声を待つホール内。
『もしかして腰が痛むのでは?』と一抹の不安がよぎった次の瞬間、あのジュンモさまの清廉な声がホール内に響きわたりました~!!

神よ~、わが主よ~

まるでドゥオーモの祈りの場にでもいるかのよう~。

諸々の天使が伎楽を奏で、天上の声が降り注ぐとはこのことかと。
人が天国に行く時は、こんな感じでお迎えが来るのかもなんて思ったりしてしまいました。
(イメージはルーベンスの「聖母被昇天」)

しか~し、最後の難関の下水道が残っています

それも、海宝マリウスの熱演で乗り越えることができました。
倒れている体勢からまるで力が入っていないかのように見せながら立ち上がり、目をつむったまま下水道を進む。
海宝マリウス大変だったでしょう、素晴らしかったです~

バルジャンの告白」では、まさかの杖をつきながらジュンモバルジャンが登場。
 
あまりに弱弱しい姿に、海宝マリウスもっと引き留めて~と思ってしまいました。
引き留めたらお話が先に進まないんですけどね…。

最後のエピローグは、ロウソクまでたどり着く時間が妙に長く途中で椅子につまずいたりしてハラハラしましたが、一つ一つの歌や仕草が胸にずんときて涙なしには観れませんでした、もう号泣~。

この舞台、ジュンモバルジャンがどんなに頑張ったとしても、誰か一人の力が欠けたとしたら成功しなかったでしょう。
カンパニー全員がこの公演を何とか成功させようと一丸となったからこそ、こんな素晴らしい舞台になったのでしょう。

だから、エピローグで司教様と心を込めてハグした後、司教様に促されるように出演者のみなさんの顔をじっ~と見つめるジュンモバルジャンの慈父のような表情ぐっときてしまいました。
誇らし気な表情で見つめ返すカンパニーのみなさん。
『レ・ミゼラブル』の舞台は終わったのに、もう一つのストーリーを見ているかのようでした。

この時、カンパニーは富山組と静岡組にわかれていたため、富山組の出演者のみなさんとジュンモバルジャンはこれが最後の舞台でした。

もしかしたら、ジュンモバルジャンは、長い期間同じ舞台で戦ってきた戦友の顔を目に焼き付けようとしていたのかもしれませんね。

最後に一言言っていいですか。

日本レミゼカンパニー最高ーーー!!

ミュージカル『レ・ミゼラブル』富山公演

そして、指揮の若林さんとオケのみなさん。
「独白」と「彼を帰して」のあの間にピッタリと合わせてくる凄さ。
指揮者とオケも同じ戦場で戦っているんですね。

若林さんオケのみなさんブラボー!! 

二言になってしまった…。